タイ政府、外国人名義貸し土地保有の全国調査を開始 2,360筆・5,467ライを把握
今週のタイ事業用不動産市場では、外国人による名義貸しを通じた土地保有への取り締まりが新たな段階に入った。タイ政府は全国規模の「LAND ACTION」を開始し、土地の名義人だけでなく、実質的な支配者や資金源、最終受益者まで調査する方針を示した。
このほか、バンコク近郊ではデータセンターの大型増強が進み、米国系Lumentumはタイ工場の生産能力を4倍超へ拡大。2026年第3四半期の工業・物流不動産市場でも、工業用地価格の上昇と貸工場・倉庫の空室率低下が確認された。
今週の注目|タイ政府、外国人名義貸し土地保有の全国調査を開始 2,360筆・5,467ライを把握
2026年10月19日|タイ政府
タイ政府は、外国人がタイ人やタイ法人を名義上の所有者として利用し、土地を実質的に保有する「名義貸し(Nominee)」への全国一斉調査を開始した。
10月19日に正式に開始された「LAND ACTION」では、各県の知事や土地事務所などが連携し、高リスクと判断された土地保有案件を調査する。
政府によると、これまでの調査で名義貸し、または外国人の代理保有に該当する可能性がある案件は1,397件確認されている。
対象となる土地は計2,360筆、5,467ライで、現在の推定価値は約140億1,000万バーツに上る。
ただし、この1,397件すべてが違法と確定したわけではない。政府は高リスク案件について、個別に所有関係や資金の流れを確認する。
今回の調査では、土地登記上の所有者や法人の株主名簿だけで判断せず、企業や土地を実質的に支配する人物、最終受益者、資金源、関連資産なども確認する。
違法な代理保有が確認された土地については、法律に基づく売却命令や民事・刑事上の手続きを進める方針だ。
一方、タイ政府は外国企業による土地利用そのものを禁止するものではないと説明している。
BOI(タイ投資委員会)による投資奨励など、法律に基づいて認められた外国企業の土地保有・利用権については、従来通り合法的な権利として扱われる。
タイで工場、倉庫、ホテル、商業施設などの用地を取得・利用する外資系企業にとっては、株主構成だけでなく、土地取得資金の出所や実質支配関係を説明できる状態にしておくことがこれまで以上に重要になる。
特にタイ法人を通じて土地を保有する場合、形式上のタイ人株主だけでなく、実際の資金提供者や意思決定者が誰なのかが調査対象となる可能性がある。
政府は高リスク案件の調査を2026年12月までに進める方針で、今後は個別案件の処分状況や土地売却命令の実績にも注目する必要がある。
出所:タイ政府
あわせて押さえたい3つの動き
01|欧州系ETIX、バンコク・データセンターを25MWへ拡張 クラウド大手3社が設備導入
2026年10月15日|Nation Thailand
欧州系データセンター事業者ETIXは、バンコク近郊のデータセンターキャンパスを増強し、AIやクラウド需要への対応を強化している。
Nation Thailandによると、キャンパスの容量を従来の約6MWから25MWへ拡張する計画で、増設中の「BKK#2」を中心に新たな設備導入を進める。
既に大手クラウドサービス・オンラインプラットフォーム事業者3社が設備を導入している。
新施設ではAI向けの高密度サーバーに対応するほか、閉ループ型冷却設備を導入。再生可能エネルギーの利用拡大も進めている。
ETIXの既存公式資料ではBKK#1を5MW、BKK#2を23MWとし、キャンパス全体を28MWとしているため、今回報道された25MWとは数値に差がある。
このため、現時点では25MWまたは28MWの全容量が既に稼働しているとはみなさず、段階的な増強が進んでいる案件として見る必要がある。
サムットプラカーン~バンナー周辺では、データセンター投資が相次いでおり、用地、受電容量、冷却設備、通信接続などを含めたデータセンター不動産の競争がさらに強まりそうだ。
出所:Nation Thailand / ETIX
02|米国Lumentum、タイ工場の生産能力を4倍超へ 新3階建て工場がフル稼働
2026年10月13日|Thairath
米国のフォトニクス大手Lumentumが、AIデータセンター向け光通信部品の需要拡大を受け、タイでの生産能力を4倍超へ拡大した。
同社によると、新たに整備した3階建ての工場は既にフル稼働しており、タイの生産拠点を「Global Flagship Factory」と位置付ける方針だ。
背景にあるのが、AIデータセンター向け光通信部品の急速な需要増加だ。
Lumentumでは、一部の光通信製品で需要が現在の供給能力を25~35%上回り、製品によっては需給ギャップが75%に達しているという。
タイでは製造能力の拡大に加え、製品設計・開発センターの設置も計画。さらにWafer Fab(半導体ウエハー製造工場)の建設可能性についても検討している。
ただし、Wafer Fabについては現時点では実現可能性を検討している段階であり、建設決定や投資額、用地取得が確定したものではない。
周辺では、主要製造パートナーであるFabrinetもナワナコン工業団地に新工場を設置する計画で、Lumentumの工場から3km未満の場所に生産能力を集積する。
Lumentumは50社を超えるタイ企業をサプライチェーンへ取り込んでおり、AI・データセンター需要を背景に、パトゥムターニー周辺で高度電子・フォトニクス産業の工場集積が進む可能性がある。
出所:Thairath
03|タイQ3工業用地、平均865万バーツ/ライへ上昇 貸工場・倉庫の空室率も低下
2026年10月15日|Cushman & Wakefield Thailand
タイの工業・物流不動産市場では、2026年第3四半期も需要の底堅さが続いた。
Cushman & Wakefield Thailandによると、全国の工業団地用地は約22万2,388ライ。
平均土地価格は第2四半期の840万バーツ/ライから、第3四半期には865万バーツ/ライへ上昇した。
一方、工業団地用地の空室率は5.73%から5.49%へ低下。さらに約2万286ライの土地が開発中となっている。
Ready-built Factory(貸工場)は供給面積約342万㎡で、空室率は10.45%から9.95%へ改善した。
平均募集賃料は月額196バーツ/㎡で、前四半期から横ばいとなった。
Ready-built Warehouse(貸倉庫)は供給面積約605万㎡。空室率は14.72%から13.55%へ低下し、平均募集賃料は月額160バーツ/㎡だった。
第3四半期は貸工場・貸倉庫とも新規供給がほぼ増えなかった一方、空室率が低下しており、既存施設の吸収が進んだ形だ。
対照的に、バンコクCBDのGrade Aオフィスはテナント優位の状況が続いている。
Grade Aオフィスの供給は約253万㎡で、空室率は第2四半期の22.8%から23.5%へ上昇。平均Gross Rentも月額943バーツ/㎡から941バーツ/㎡へわずかに低下した。
工場・倉庫では供給が引き締まる一方、CBDオフィスでは企業側の選択肢が多いという市場の違いが鮮明になっている。
出所:Cushman & Wakefield Thailand

GDM編集部







