タイBOI、「安全な生産拠点」としての地位確立を加速 中東情勢の混乱を追い風に
中東紛争を背景とした世界的な地政学リスクの高まりを受け、タイ投資委員会(BOI)が戦略を転換しつつある。多国籍企業のサプライチェーン再編の受け皿として、タイを「安全・安定した生産拠点(Safe and Secure Production Base)」として売り込む動きを本格化させている。
BOI事務局長のナリット・テードスティーラサクディ氏は、「現在の世界的な緊張は短期的な混乱ではなく、新たな世界秩序として定着しつつある」と強調。食料・エネルギー・サプライチェーン・人材の4分野を「安全保障の柱」として打ち出し、グローバル経済におけるタイの不可欠性を訴えている。
世界のサプライチェーンにおけるタイの強み
タイはすでに複数の主要産業で支配的な地位を占めている。ハードディスクドライブ(HDD)では世界生産量の70〜80%を担い、プリント基板(PCB)生産ではASEAN首位に立つ。電気自動車(EV)製造においても、中国を除く地域で最大の生産拠点となっており、医療・ウェルネス分野での実績もある。
3つの重点政策を加速

BOIが新政権への提案として準備中の重点課題は以下の3点だ。
・EVセクターでは「EV 3.5政策」を推進し、補助金の継続と国内部品調達の強化を目指す。
・半導体分野では包括的な戦略が最終段階に入っており、米Analog Devicesが今月中にタイ最大規模の設計センターを開設予定、独Infineonも2026年第3四半期に新施設を完成させる見込みだ。
・クリーンエネルギーについては、データセンターやAI産業の急拡大に対応すべく、グリーン電力の直接購入協定(Direct PPA)を通じて最大2,000メガワットの供給体制構築を目指す。
規制緩和と人材確保も並行推進

許認可の遅れを解消するため、8機関と連携した「ファストパス」制度を導入。170億バーツ超の16件のパイロットプロジェクトですでに実績を上げており、審査期間を20〜50%短縮することを目標とする。
人材育成面では5年間で半導体エンジニア8万人の育成を掲げる。海外の高度人材の呼び込みに向け、「90日報告義務」の緩和や労働許可証のビザ一体化も検討されている。
ナリット氏は「人材とサプライチェーンが整えば、タイに進出した企業は短期の客では終わらない。今後10年の新経済の礎になる」と締めくくった。

GDM編集部







