高度製造業向け大型賃貸工場が不足 EECで1.5万㎡級の確保難しく
タイへのハイテク投資が増える一方で、その受け皿となる大型賃貸工場の不足が目立っている。CBRE Thailandによると、EECの工業団地では、1万〜2万㎡規模の工場をすぐに借りたい企業に対し、条件を満たす物件がほとんどないという。
このほか今週は、アマタシティ・チョンブリで42.5MWpの浮体式太陽光発電プロジェクトが進展。バンコクのオフィスではハイブリッド勤務を前提とした面積の使い方が広がり、商業不動産では省エネ性能やESG対応が賃料・資産価値にも影響するとの分析が出ている。
今週の注目|EECで大型賃貸工場が不足、1.5万㎡級の物件確保が難しく
2026年9月11日|CBRE Thailand
タイ政府がデータセンターや半導体、AI関連産業の投資誘致を進めるなか、実際に企業が入居できる工場の供給が追いついていない。
CBRE ThailandのIndustrial & Logistics部門によると、今年だけでもデータセンター部品のサプライチェーンに関わる米国・中国企業3社から、タイでの工場賃貸について相談を受けた。
3社はいずれも、工業団地内で少なくとも1万5,000㎡(約9ライ)の工場を探していたが、条件に合う物件の確保は難しかったという。
CBREの内部データでは、EECの工業団地内で現在賃貸可能とみられる工場は5棟未満。しかも、いずれも2,000〜3,000㎡程度以下で、1万〜2万㎡を必要とする企業には規模が足りない。
大型工場を必要とする企業に残される選択肢は、自社で土地を取得して工場を建設するか、デベロッパーにBuilt-to-Suitで建ててもらう方法が中心になる。
CBREによると、自社建設では土地選定から稼働まで約2〜3年、Built-to-Suitでもおよそ18カ月かかる。Built-to-Suitでは、デベロッパー側が再賃貸リスクを負うため、10年以上の長期契約を求められるケースも多い。
供給不足の背景には、単純に工場の建設数が少ないことだけでなく、タイ特有の制度もある。
既存テナントによる工場の転貸や契約譲渡には制約があり、工場操業許可も事業内容と結び付いている。このため、他国で見られるような中古工場の流通市場が育ちにくい。
データセンター関連や先端製造業では、投資判断から操業開始までのスピードも重視される。投資優遇制度が整っていても、実際に入れる工場がなければ、企業がマレーシアやベトナムなど別の候補地へ向かう可能性もある。
タイへの工場進出を検討する企業にとっては、「土地を買うか、完成済み工場を借りるか」という従来の比較に加え、Built-to-Suitを含めて早い段階から物件戦略を決める必要が出てきている。
なお、「EECで賃貸可能な工場が5棟未満」という数字はCBREの内部市場データに基づくもので、公的機関による全数調査ではない点には留意したい。
出所: CBRE Thailand
あわせて押さえたい3つの動き
01|AMATA・B.Grimm、工業団地内で42.5MWpの浮体式太陽光
2026年9月11日|AMATA
AMATAとB.Grimm Powerは、アマタシティ・チョンブリ工業団地で大型の浮体式太陽光発電プロジェクトを進める。
投資額は12億バーツ、設備容量は最大42.5MWp。工業団地内の貯水池を利用するため、新たな発電用地を取得せずに再生可能エネルギーの供給を増やせる。
商業運転開始後は、年間約2万9,300トンのCO2相当量を削減する見込み。工業団地内の企業への再生可能エネルギー供給を想定している。
工業団地の競争力は、土地価格や高速道路へのアクセスだけでは決まりにくくなっている。特にグローバル企業では、工場で利用する電力の再エネ比率を立地条件に含めるケースが増えており、電力や水といったユーティリティの差が工業用地選びにも影響する。
出所: AMATA
02|バンコクのオフィス、デスクの平均利用率は35%
2026年9月10日|Bangkok Biz News(Knight Frank Thailand調査)
バンコクのオフィスでは、「何㎡借りるか」だけでなく、そのスペースを実際にどう使うかが重視されるようになっている。
Knight Frank Thailandの調査をもとにしたBangkok Biz Newsの報道によると、調査対象オフィスのデスク利用率は平均35%、ピーク時でも55%だった。
会議室の平均利用率も36%。一方で、小規模な2〜4人の会議が全体の約51%を占め、大人数向けの会議室は利用頻度が低かった。
調査は5万7,000㎡超のオフィス利用データに加え、経営者55人超、従業員3,174人などを対象としている。2025年の調査では、回答者の97%がハイブリッド勤務を希望したという。
オフィス移転では単純な面積削減ではなく、固定席を減らし、小会議室や集中スペース、共有エリアを増やすActivity-Based Workplaceへの移行が選択肢になっている。
出所: Bangkok Biz News
03|商業不動産、賃料だけでなく「建物性能」も評価材料に
2026年9月13日|Bangkok Biz News
オフィスや商業不動産では、立地や賃料に加えて、エネルギー効率やESG対応、建物管理の性能を評価する動きも広がっている。
Bangkok Biz Newsが紹介したアジア太平洋地域のデータでは、グリーン認証を取得した建物は、一般的な建物より賃料が最大約11%高いとの分析が示された。
建物設備をリアルタイムで把握するDigital Twinの活用も広がっている。記事で紹介されたNuvolaの導入事例では、冷却設備のエネルギー使用量を8〜12%、照明を15%超、水使用量を約8%削減したケースがあるという。
これらは個別企業の導入事例であり、すべての建物で同じ削減効果が出るわけではない。
ただ、バンコクでは新しいGrade Aオフィスの供給が増える一方、築年数の経過したビルも多い。建て替えだけでなく、設備更新や省エネ改修によって競争力を維持するという選択肢は、今後さらに増えそうだ。
出所: Bangkok Biz News

GDM編集部







