タイEEC、初の「個別設計型」投資優遇へ
8案件・総額1,000億バーツを審査
タイ東部経済回廊(EEC)の政策委員会は2026年8月、投資家ごとに優遇措置の内容を設計する「カスタマイズ型投資優遇制度」の初承認を検討する。初回の対象となるのは8件の投資案件で、投資総額は約1,000億バーツに上る。
一律型から「企業別」の投資支援へ
今回導入が検討されているのは、あらかじめ定められた一律の優遇措置を適用するだけでなく、投資案件の内容や企業側の要望に応じて、支援内容を個別に組み立てる制度だ。
各案件を個別に審査したうえで、タイ政府が成長分野として位置付ける対象産業を中心に、企業ごとに異なる優遇措置を政策委員会へ提出する。政策委員会の承認を受けることで、優遇内容が正式に確定する。
EECではこれまでも、2018年施行の東部特別開発区法に基づき、法人税や輸入関税などを中心とする投資優遇措置を提供してきた。今回の制度は、こうした既存の支援を企業別に調整し、より具体的な投資条件に対応する取り組みとなる。
税制、許認可、ビザまで一体的に支援
カスタマイズ型優遇措置には、法人税や輸入関税などの税制面だけでなく、工場建設や事業開始に必要な許認可、外国人従業員の就労許可やビザ取得なども含まれる見通しだ。
税制優遇については歳入局や税関局などの関係機関と調整し、許認可や人材受け入れについては、EECのワンストップサービスを通じて手続きを迅速化する。
EEC事務局のチュラー・スックマノップ事務局長は、投資家との最初の接触から事業開始までを継続的に支援し、企業に適した投資促進地区の選定や、工場建設に必要な優遇措置の準備を進めてきたと説明している。

8件の先行案件、投資額は約1,000億バーツ
制度の初適用候補として政策委員会に提出されるのは、計8件の投資案件。投資総額は約1,000億バーツとなる。現時点では企業名や個別の投資内容、各社に付与される具体的な優遇条件は公表されていない。案件ごとに審査するため、税制優遇の期間や許認可支援の内容などは企業によって異なる見込みだ。
今回の審査は、新制度を実際の大型投資案件へ適用する最初の事例となる。正式に承認されれば、EECの投資誘致策が、従来の制度中心の段階から、個別案件の実行を支援する段階へ移ることになる。
日本企業にも個別交渉の余地
日本企業にとっては、既存のBOIやEECの優遇制度だけでは対応しにくかった大型案件や、複数の行政機関との調整が必要な投資について、企業側の条件に合わせた支援を受けられる可能性が広がる。
特に、工場建設、機械設備の輸入、外国人専門人材の受け入れなどを一体的に進める案件では、税制と行政手続きを包括した支援が投資判断の材料となりそうだ。ただし、制度は一律に適用されるものではなく、投資額、対象産業、技術、人材育成、地域経済への貢献などを踏まえて個別に判断されるとみられる。具体的な適用条件については、政策委員会による正式承認後の発表を確認する必要がある。
3空港高速鉄道の判断は先送りか

一方、EECの主要インフラ事業であるドンムアン、スワンナプーム、ウタパオの3空港を結ぶ高速鉄道計画については、判断がさらに遅れる可能性がある。
事業費は約2,200億バーツ。CPグループを中心とするAsia Era Oneとの契約を再交渉するか、契約を終了するかが焦点となっているが、政策委員会に提出する詳細案は8月の会合までにまとまらない可能性が高いという。
EECでは、投資促進地区の整備、ワンストップサービス、税制・行政手続きの優遇などを組み合わせ、外国企業の誘致を進めている。今回の8案件が正式に承認されれば、企業ごとに条件を設計する新たな投資誘致モデルの試金石となる。
今後は、対象となる企業や産業、具体的な優遇条件、投資・雇用への波及効果が注目される。
出所:
The Nation「EEC Board Set to Approve First-Ever Investment Incentives with $2.8 Billion Debut」2026年8月4日
8件・総額約1,000億バーツの個別設計型投資優遇と、3空港高速鉄道計画の判断先送りについて。
タイ東部経済回廊事務局(EECO)「EEC Incentives」
EECの投資優遇、対象産業、ワンストップサービスなどの制度概要。
注記:
本記事執筆時点では、8件の投資案件および個別の優遇措置は政策委員会による正式承認前。企業名、対象産業、優遇条件などは公表されていない。

GDM編集部






