
タイの工業用地および物流市場の展望(2025年)
目次
2025年に向け、タイの工業不動産市場は、特に東部経済回廊(EEC)およびその周辺地域において、堅調な成長を続けている。政府主導の投資奨励策が国際企業の誘致に寄与し、各地の工業団地における土地販売が拡大している。
CBREの調査によれば、タイ国内外を問わず、さまざまな業種や国からの土地需要が継続的に増加している。これにより、物流不動産市場では新規デベロッパーの参入が進み、質の高い近代的スペースの供給競争が激化している。
SILPs(土地+サービス型工業地)への外国資本の需要拡大
政府の積極的な支援を背景に、Service Industrial and Plots(SILPs)への外国資本の需要が引き続き高まっている。一方で、米国の通商政策の不確実性など外的要因に対する懸念も存在しており、タイへの投資や輸出成長に影響を及ぼす可能性がある。
土地移転:2024年には2,400ライ超、2025年もEV関連が牽引へ
WHAおよびアマタ社の報告によれば、2024年の土地移転面積は合計2,400ライを超える見通しとなっている。EV、電子・電機、クラウド・データセンター関連企業の進出により、2025年も大型の土地需要を背景に販売パイプラインは堅調に推移する見込みである。
即入居型工場(RBF)需要の高まりと供給の限界
即入居型工場(Ready-Built Factory:RBF)の需要が近年高まっており、タイでは新規サプライチェーンを構築する企業にとって魅力的な選択肢となっている。
特に中小企業にとっては、以下のような理由からRBFが好まれる:
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初期投資と時間を削減できる
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柔軟な賃貸条件
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管理運営がプロによって行われている
しかし現在、多くの開発業者がBTS(Build-to-Suit)型やプレリース型に重点を移しているため、RBFの新規供給が減少し、優良立地での空室が著しく限られている。
また、自動車・プリント基板(PCB)業界からの需要の高まりを受け、一部の旧型倉庫をRBFへ転換する動きも加速している。2025年のRBF総供給面積は約260万㎡に達する見通しで、需給の逼迫により稼働率も上昇傾向にある。
モダン物流施設(MLP)における競争の激化
MLP(Modern Logistic Property)とは、現代的なサプライチェーンに対応した高機能物流施設を指す。eコマース、自動車、電子機器、物流業など、成長分野において不可欠なインフラであり、投資対象としても人気が高い。
MLPと従来型倉庫の違い:
項目 | MLP | 従来型倉庫 |
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設計思想 | サプライチェーン効率重視 | 一般的な保管用 |
特徴 | 高天井・自動化対応・立地重視 | 基本構造・設備が簡素 |
対象業種 | EC、先進製造業、輸配送系 | 一般商材保管中心 |
CBREによれば、2025年のMLP新規供給は前年比で約14万㎡増加する見込みであり、特にバンナートラート通り沿いおよびEEC内が最も活発なエリアとされている。
出所:
CBRE – Multispeed Recovery Defines Property Landscape

GDM編集部