
シンガポールからの対タイ投資、実態は中国資本?——米中対立回避で“偽装投資”の懸念
タイ国家経済社会開発評議会(NESDC)は、近年急増しているシンガポール企業からの投資申請の中に、実際には中国企業が“国籍を偽装”して登録しているケースが含まれている可能性があると警鐘を鳴らしている。背景には、米国の対中関税強化(いわゆる「トランプ関税の壁」)を回避する動きがある。
実態:中国企業が“シンガポール経由”で投資
NESDC事務局長によると、中国企業の多くが自国での製造拠点を撤退・分散させており、その一部は米国の規制回避のためにシンガポールに登記して「外資」としてタイに投資しているという。
仮に米国が調査を行えば、これらが実質的には中国企業であることが明らかになり、タイからの輸出が貿易制裁や追加関税の対象となるリスクが高まる可能性もある。
NESDCの対策提言:タイ企業の過半出資を促す
NESDCは、BOI優遇措置を受ける外資系企業に対し、タイ企業が過半出資する形態を推進すべきと提言している。
たとえば以下のような手法が推奨されている:
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タイ企業とのパートナーシップ締結
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合弁事業(Joint Venture)として法人化し、法律上「タイ企業」と認定される構造を構築する
背景:米中テック冷戦とASEANの役割
シンガポールがFDIランキングの首位を維持している理由の一つには、米中間のテクノロジー競争がある。多くの中国・米国のテック企業がシンガポールを中立的な地域ハブとして活用しており、その資本がタイ市場へと流れ込んでいる構図が読み取れる。
出典:
The Nation|FDI動向とシンガポール経由の中国資本問題
BOI公式リリース(英語)

GDM編集部