
台湾・デルタ電子、タイへの投資を加速──米中摩擦と地政学リスクを背景に生産分散
台湾の大手電機メーカーであるデルタ・エレクトロニクス(Delta Electronics)は、タイでの投資を拡大している。これは、米中関税摩擦や台湾海峡の緊張といった地政学的リスクに対応し、これまで中国本土に集中していた生産拠点を分散させる戦略の一環である。
新工場の建設・投資計画
バンコク中心部から東へ約30分のバンプー工業団地では、デルタ電子の新工場の建設が進行中だ。
2024年3月には、同工業団地内にある別の工場が稼働を開始しており、今回の新工場の投資額は34億バーツ超、完成は2026年を予定している。
さらに、2025年4月の取締役会決議により、デルタ・エレクトロニクス(タイ)は、サムットプラカーン県の「アラヤ・ジ・イースタン・ゲートウェイ」内の土地150ライ(約24ヘクタール)を取得。この土地に新たな製造工場を建設し、CPBG製品や将来的な事業拡大に対応する。
このプロジェクトには18億3,900万バーツ以上が投資される。
中長期計画:2028年までに5億ドル投資へ
デルタ電子は、2028年までに総額5億ドル(約1,800億円)を主にタイに投資する計画であり、電源装置およびシステム分野で世界的リーダーとなることを目指している。
同社の顧客にはAppleやTeslaが含まれており、NVIDIAの最新AIサーバーにも関与しているとみられる。
背景:台湾企業の生産拠点再構築
2000年代以降、台湾の電子・部品メーカーは、米国企業向け製品の大量生産拠点として中国本土に工場を展開してきた。しかし近年、米国の対中関税や台湾海峡の緊張を受けて、東南アジアへの進出が加速している。
タイは地理的にも近く、人件費が比較的安価で、生産移転に適しているとされる。
なぜタイなのか?
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東南アジア最大の自動車生産拠点であり、電子部品の需要が高い
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スケールメリットが活かせる製造環境
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税制優遇
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質の高い労働力
これらの条件が、タイを「次なる製造ハブ」として台湾企業にとって魅力的な存在としている。
台湾の対タイ投資の伸び
タイ投資委員会(BOI)によると、台湾からの外国直接投資(FDI)申請額は2019年から2024年の5年間で約3倍に増加し、49.96億バーツに達した。
2024年には、日本を上回って初めて台湾がFDI件数で第4位となり、シンガポール、中国本土、香港に次ぐ規模となった。
出所
BOI Google Sheet 投資申請データ
Nikkei Asia|デルタ電子・Foxconnの投資動向
Prachachat Business News|投資案件ニュース
Thailand Business News|BOI申請件数が10年ぶり最高に

GDM編集部