
EV販売、低迷する自動車市場の中で成長
タイの自動車市場全体が逆風に直面する一方で、電気自動車(EV)分野は堅調な成長を示している。タイ工業連盟(FTI)によると、国内販売の好調とタイ製EVの輸出拡大がその原動力となっている。
2025年1月から7月までの国内市場では、乗用バッテリーEV(BEV)の販売が新車販売全体の18%を占め、24%を占める石油燃料ピックアップトラックに急速に迫っている。内燃機関車(ICE)乗用車(23%)やハイブリッドEV(20%)にも近づいている。
市場全体の低迷との対照的な伸び
EV分野のこの著しい成長は、自動車市場全体の停滞と鮮明な対比をなしている。2025年1~7月期の新車総販売台数は前年比0.74%減の35万1,796台にとどまった。FTIは、この減少の要因として、自動車ローンの審査難を指摘しており、これはタイ国内の家計債務の高さに起因する継続的な課題だとしている。
その中で、BEVの成長は特筆に値する。2025年1~7月のBEV販売は前年比ほぼ57%増と急増した。MGセールス(タイランド)副社長は、技術革新やバッテリー原材料の価格下落を背景にBEVの価格が20~30%も低下し、購入しやすくなったことが販売拡大の大きな要因だと説明している。新モデルの登場ペースは今後緩やかになると見られるが、市場にはすでに消費者が選べる多様な選択肢が揃っている。
世界的な輸出拠点への道筋
タイは国内市場にとどまらず、BEV輸出のハブとして世界的な地位を築くことにも注力している。2025年7月には、タイ国内で生産されたBEV167台の初輸出という重要な節目を迎えた。
この目標を加速するため、国家EV政策委員会はEV3.0およびEV3.5インセンティブ制度の下で新たな措置を承認した。これにより特に輸出を行うメーカーが生産義務を達成しやすくなるよう調整が行われた。新ルールでは、輸出用に生産した車1台が国内生産義務を1:5の比率でカウントされることになった。
2024年にBEV生産を開始した企業は当初、輸入車1台につき国内生産1台(1:1)という目標が課されていたが、新制度では輸出分がより高い比率でカウントされるため、達成が容易になる。こうした戦略的な変更は、国内生産の一層の拡大を促し、タイが世界のEV市場における重要拠点として地位を固めることが期待される。
Source:
EVs sales grow despite downbeat market (Bangkok Post)
Thailand domestic car sale data

GDM編集部