
予測されるタイ政府の政策 ー 外国企業への規制強化の可能性
目次
前回記事の一連の摘発事例を踏まえると、タイ政府は今後、外国企業の事業活動に対する規制を強化する可能性が高い。日系企業も例外ではなく、中国企業に関連する事業への監視強化にとどまらず、その影響が日系企業を含む外国企業全般にも及ぶ懸念がある。
具体的には、以下のような政策が打ち出されることが予測される。
1. 外国企業の事業活動に関する監視強化
環境規制の厳格化
森林保護区の違法開発や有害廃棄物の不法投棄が問題視されているため、環境基準の見直しと監視の強化が行われる可能性がある。特に環境影響評価(EIA)の適用範囲を拡大し、環境破壊のリスクがある事業への事前審査を厳しくすることが考えられる。
外国企業の土地利用に関する審査強化
チャンタブリー県の事例を受け、外国企業による農地や工業用地の取得・使用に関する法規制の厳格化が進む可能性がある。今後は、外国資本による土地取得の規制や、農地利用のガイドラインの見直しが行われるかもしれない。
2. 外国資本企業のコンプライアンス義務の強化
企業登録時の規制強化
外国企業がタイで事業を行う際の登録要件を強化し、厳格な事業計画や環境対策の提出を義務化する可能性がある。特に中国企業の工場や倉庫の運営に関しては、設立後の監査を増やすことで違法行為を抑制する方針が取られるかもしれない。
罰則の強化
違法廃棄物処理や密輸、不正賭博などの摘発事例を受けて、違反企業に対する罰則を厳格化し、より高額な罰金や事業免許の即時取消などが実施される可能性がある。
3. 不動産・賃貸市場の規制強化
外国人投資家によるコンドミニアム購入の制限
タイではすでに外国人による不動産購入に制限があるが、違法な賃貸ビジネスが横行していることを受けて、さらなる規制が設けられる可能性がある。具体的には、外国人所有の物件に対する賃貸契約の監視強化や、違法賃貸の摘発を目的とした特別タスクフォースの設置が考えられる。
4. 外国企業に対する税務・関税の厳格化
外国企業の貿易活動への監視強化
違法廃棄物の輸入や偽造品の密輸が問題視されているため、外国企業の貿易活動に対する監査が厳しくなる可能性がある。特に、通関手続きの透明化や関税逃れを防ぐための監視体制の強化が進むかもしれない。
外国企業の税務監査強化
違法活動を行っている企業の多くが税務申告を適切に行っていない可能性があるため、税務監査の対象を外国企業に拡大し、不正な資金の流れを調査する動きが出るかもしれない。
5. 治安維持のための取り締まり強化
ビザ制度の厳格化
違法行為に関与する外国人を排除するために、ビジネスビザの審査強化や、企業経営者のビザ更新条件の厳格化が行われる可能性がある。
違法賭博・薬物取引の取締強化
チョンブリーやバンコクでの摘発事例を受け、違法賭博や薬物取引に関与する外国人の監視を強化する可能性がある。これには、外国人居住区の特別監視プログラムの導入や、タイ入国時の審査強化などが含まれるかもしれない。
まとめ
現在、タイでは外国企業の投資が増加しており、中国企業の進出も活発化している。しかし、一部の中国企業が環境破壊や違法活動に関与していることが判明し、タイ政府は対応を迫られている。
今後、環境規制の強化、土地利用の厳格化、企業コンプライアンスの強化、不動産市場の監視、貿易管理の厳格化、治安維持のための取締強化など、多岐にわたる規制強化が進められると予測される。
次回は、タイ政府による中国企業のイメージ悪化を踏まえ、日系企業の回帰の可能性について予測する。

GDM編集部