タイ政府、外国人ノミニー規制を大幅強化──2026年4月1日より新ルール施行へ
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ノミニー問題の深刻化を受け、商務省が緊急対応
タイ商務省傘下の事業開発局(DBD:Department of Business Development)は、外国人投資家がタイ人名義を使って実質的に事業を支配する「ノミニー」行為を防ぐため、法人登記に関する規制を大幅に強化する方針を明らかにした。新たな命令は2026年3月中旬に公布され、4月1日より施行される予定である。
DBD局長のプーンポン・ナイヤナパコーン氏は、大手法律事務所17社以上を招いて意見交換・協議を実施し、ノミニー対策の強化に向けた実効的な措置を検討してきたと述べた。
現存企業の80%以上にノミニーの疑い:規制強化の背景

DBDの調査によると、現在タイで活動する法人は78万2,542社に上る。そのうち11万8,016社は、外国人持株比率が0.01〜49.99%でありながら「タイ企業」として登録されている。DBDはこれらの企業の80%以上において、外国人の代理としてタイ人株主が名義を保有している「ノミニー形態」が存在すると推定している。
既存規制の抜け穴を塞ぐ
DBDは2025年1月1日より、外国人が出資または署名権限を持つ合名会社・有限会社への登記申請に際し、銀行口座残高証明などの財務証明書類の提出を義務付ける「命令第2号/2025」を施行していた。同措置の効果についてプーンポン局長は、ノミニー企業の新規登記を65%以上削減できたと評価する一方、依然として規制をかいくぐろうとする試みが続いていると指摘した。
2026年の新命令では、合名会社や有限会社の登記において外国人を無限責任社員・代表権限者に変更する場合の手続きと審査基準を新たに定め、規制の網をさらに強化する。
摘発事例:ラチャブリー県でのノミニー企業ネットワーク
規制強化の動きと並行して、実際の摘発事例も相次いでいる。
2026年3月10日、中央捜査局(CIB)とDBDは合同で「ノミニーを剥ぐ作戦(Operation: Peeling Back the Nominees)」を展開。ラチャブリー県内のヤシ購入企業および加工工場8社を一斉捜索した。
当局の調査によると、中国人投資家グループがタイ人を名義人として利用し、ヤシの流通を上流から下流まで独占。農家からの買取価格を1個あたり2〜5バーツに抑える一方、中国への輸出価格は35〜50バーツという大幅な格差が確認された。また、売上が増加しているにもかかわらず帳簿上は赤字を計上し、脱税を図っていた疑いもある。法人6社、タイ人10名、外国人7名が被疑者として特定されている。
参照記事:CIB, DBD bust alleged foreign front firm network in Ratchaburi
違反した場合の罰則
外国企業法(仏暦2542年)に基づく罰則は以下のとおりである。
| 対象 | 適用条項 | 罰則 |
|---|---|---|
| ノミニーとなったタイ人 | 第36条 | 禁固最大3年、罰金10万〜100万バーツ、またはその両方 |
| 無許可で事業を行う外国人 | 第37条 | 同上 |
| 裁判所命令違反 | ─ | 日額1万〜5万バーツの追加罰金(違反が継続する間) |
タイに進出する日系企業への示唆
プーンポン局長は、新措置はあくまで正当な投資活動を妨げることなく、かつ事業者への過度な負担を課さない形での運用を目指すと強調した。新ルールにより、タイ人起業家にとってより公平な競争環境が実現されることが期待されている。
今回の規制強化は、タイで事業を展開する日系企業にとっても他人事ではない。特に以下の点について確認が求められる。
- 株主構成の見直し:タイ人株主が実質的な意思決定に関与しているか
- 財務書類の整備:銀行残高証明等の提出要件への対応
- 合弁・提携契約の精査:名義貸しと見なされるリスクのある契約形態の是正
タイでの法人設立・変更登記を予定している企業は、4月1日の施行前に専門家への相談を推奨する。
出所:DBD to tighten foreign business registration rules to curb nominee arrangements

GDM編集部







