外資企業でも土地は買える? BOIとIEATの特権を徹底解説【タイ進出ガイド】
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最終更新:2024年12月時点の情報に基づく
「タイでは外国企業は土地を持てない」——タイ進出を検討する経営者や担当者から、よくこの言葉を耳にします。確かにタイの土地法は外国人・外国法人による土地所有を原則として禁止しています。しかし、この「原則」には重要な例外があります。
正しいルートと手続きを踏めば、外資比率100%の企業であっても土地を所有することは可能です。その鍵となるのが、BOI(タイ投資委員会)とIEAT(タイ工業団地公社)という2つの制度です。
本記事では、タイの土地法の基本から、BOI・IEATそれぞれの特権の内容・条件・実務上の注意点まで、2024年12月施行の最新規制を含めて解説します。
1. タイの土地法:外国企業はなぜ土地を買えないのか
タイでは土地法第86条により、外国人および外国法人による土地の所有が原則として禁止されています。具体的には、外国人が登録資本金の50%以上の株式を保有する法人、または外国人株主数が全株主の過半数を超える法人は、タイ国内での土地所有権の登記ができません。
なお、混同されやすい点として、建物(工場・事務所・倉庫など)の所有については土地法の制約は適用されません。外国企業であっても建物の所有は原則可能であり、土地と建物が別個の所有権として扱われる点は日本と同様です。
次節からは、この「原則禁止」を合法的に乗り越える2つのルート、「BOIとIEAT」について詳しく見ていきます。
2. BOI(タイ投資委員会)による土地所有特権

BOI(Board of Investment)は、タイ政府が投資促進を目的として設立した機関です。BOIから「投資奨励証書」の交付を受けた企業は、投資奨励法第27条に基づき、外資比率にかかわらず事業目的の土地を所有できます。
取得の基本条件
- BOI指定の奨励業種(製造業・先端産業・デジタル産業など)に該当すること
- 投資奨励証書(BOI Certificate)を取得していること
- 取得したい土地の用途・面積をBOIへ申請し、承認を受けること
- 都市計画上の工業用途地域(紫カラーゾーン)内の土地であること
- 払込済み登録資本金を5,000万バーツ以上に維持すること(2024年11月改定)
申請から土地取得までの流れ
| STEP 1:BOI申請 | 奨励業種の確認・必要書類の準備 |
| STEP 2:投資奨励証書の取得 | 審査・承認(通常60〜90日) |
| STEP 3:土地面積・用途の申請 | BOIへ使用目的・面積を届出・承認 |
| STEP 4:土地局(Land Office)で登記 | 権利証書(Chanote)の取得 |
実務上の注意点
- BOIの奨励業種リストは毎年改定されるため、申請前に必ず最新版を確認する
- 申請から証書発行まで通常60〜90日を要する(書類不備があれば延長する場合もある)
- 2024年改定により、役員・従業員向け居住用地の取得条件が明確化され、対象面積が大幅に拡大された
- BOI認可が取り消された場合、原則として1年以内に土地を売却しなければならない義務が生じる(延長申請が認められる場合もある)
土地以外のBOIインセンティブ
BOIの特権は土地の取得だけにとどまりません。以下のような税制・非税制の優遇措置が組み合わさっており、これがBOIを活用する最大の動機となっています。
- 法人税の減免(業種・立地条件により最大8〜13年間の全額免除。EEC内の特定区分は最大15年間)
- 機械・原材料の輸入関税免除
- 外資100%での事業運営の許可
- 外国人就労ビザ・ワークパーミット取得要件の緩和
【2024年最新】BOI土地所有規制の改定ポイント
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【2024年12月最新情報】BOI土地所有規制が大幅アップデート 2024年11月〜12月、BOIは外国法人の土地所有に関する新規則(BOI公告第16/2567号・Por.8/2567号)を施行しました。 |
改定の主なポイント
① 資本金要件の明確化
土地を所有するためには、所有期間を通じて払込済み登録資本金を5,000万バーツ以上に維持することが条件となりました。これは土地所有権が「プロモーション証書単位」ではなく「法人単位」で管理されることも意味します。
② 所有可能な土地面積の変更
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用途 |
改定前(旧規則) |
改定後(2024年11月〜) |
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工場・事業所用地 |
個別審査 |
個別審査 |
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オフィス用地 |
最大5ライ |
最大5ライ |
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役員居住用地 |
最大1ライ |
廃止 |
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従業員宿舎用地 |
最大2ライ |
最大20ライ |
【重要】従業員宿舎用地の上限が2ライから20ライへと10倍に拡大されました。これにより大規模な工場を持つ製造業などで、従業員向け施設の土地確保が大幅に容易になります。
③ 立地条件の追加
- オフィス用地・居住用地は、事業所と同一敷地内でも別敷地でも認められる
- 従業員宿舎用地は、事業所と同一敷地でない場合、幹線道路経由で10km以内に位置すること
- 土地の用途は承認された目的のみに限定され、地域コミュニティの基準に違反してはならない
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この改定が意味すること 2024年改定前は「役員居住用地の取得は実務上ほぼ困難」と言われていましたが、新規則では条件が整理・明確化されました。また、従業員宿舎用地の大幅拡大により、製造業・物流業など大人数を雇用する企業が社宅用地を合法的に確保しやすくなっています。5,000万バーツの資本金要件を満たせる企業であれば、積極的に活用を検討すべき制度です。 |
3. IEAT(タイ工業団地公社)による土地所有特権

IEATが管理・運営する工業団地に入居する場合、BOIの認可とは独立した根拠で外資100%の企業でも土地の完全所有権を取得できます。
IEATが承認すれば、土地局が権利証書(Title Deed)に新所有者名を追記する形で正式な所有権が与えられます。
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【注意】IEATが管理・関与していない民間の工業団地もあり
「工業団地」という名称がついていても、IEATが管理・関与していない民間の工業区ではこの特権は適用されません。入居を検討する際は契約書・公式登録情報でIEATの関与を必ず確認してください。 弊社で配布している工業団地マップで紫色の文字の工業団地はIEAT工業団地です。 |
取得の条件
- IEATが運営または共同運営する工業団地内の土地であること
- IEATへ土地使用許可申請(Form IEAT 01/1)を提出し、承認を受けること
- IEATから承認後、土地購入の申請(Form IEAT 15 S)を別途提出すること
- 事業内容がタイの工業・技術発展に資すると認められること
- 環境・汚染防止対策の基準を満たすこと
IEATルートのメリットと注意点
IEATルートの最大のメリットは、BOIの対象外となる業種でも入居できるケースがある点と、団地内のインフラ(電力・水道・道路・通信)が整備済みである点です。また、IEATが「自由貿易区(Free Zone)」として指定したエリアでは、機械・原材料・製品の輸出入に関する関税や付加価値税の免除が適用されます。
一方で、IEATルート単独では法人税の減免が受けられない点に注意が必要です。このため実務上は、IEATの工業団地に入居しながら同時にBOIの認可も取得するケースが大多数です。この場合、土地の登記はIEAT法第44条に基づく所有権として処理されます。
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実務上の原則:BOIとIEATは「併用」が基本 IEATの工業団地に入居 + BOIの認可を同時に取得することで、土地所有権・法人税減免・関税免除のすべてを確保できます。どちらか一方だけでは得られないメリットを組み合わせるのが、タイ進出企業の標準的なアプローチです。 |
4. BOI vs IEAT|どちらのルートを選ぶべきか

2つの制度の違いを整理すると、選択の基準が見えてきます。立地の自由度と税制優遇を重視するならBOI、インフラが整備された工業団地への集積を重視するならIEATが基本的な使い分けです。ただし前述のとおり、多くの企業はこの2つを組み合わせて活用します。
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比較項目 |
BOI(投資奨励委員会) |
IEAT(工業団地公社) |
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土地の場所 |
全国(工業用途地域内) |
IEAT指定の工業団地内のみ |
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対象業種 |
BOI指定の奨励業種 |
製造業・工業系全般 |
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法人税免除 |
あり(最大8〜13年間、EEC内A1+は15年) |
なし |
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関税免除 |
機械・原材料 |
Free Zoneでは |
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資本金要件 |
払込済み5,000万バー |
個別審査 |
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撤退時の売却義務 |
BOI認可取消後、 |
事業終了・譲渡後、 |
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インフラ整備 |
自己手配が必要 |
団地内インフラが |
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手続き期間の目安 |
通常60〜90日 |
比較的定型的で早い |
5. 実務上の注意点:カラーゾーン
都市計画カラーゾーンはBOIとは別の規制
BOIの認可を得て土地の取得権を得たとしても、都市計画法(Town Planning Act)のカラーゾーン規制は別途クリアする必要があります。BOIの土地取得権とカラーゾーンは完全に独立した制度であり、両方の条件を同時に満たす場所でなければ工場は建設できません。
工場を建設するためには、都市計画上の工業用途地域(紫カラーゾーン)内の土地を選ぶ必要があります。「BOIがあれば場所は問わない」という誤解は実務上のトラブルの原因となるため、土地選定の段階で必ずカラーゾーンを確認してください。

権利証書(Chanote)の確認
土地の所有権を証明する正式な書類は権利証書「Chanote(チャノート)」です。タイには複数種類の土地証書が存在しますが、外国企業が取得できる完全な所有権が認められるのは基本的にChanoteのみです。土地取引の際は必ずChanoteの種別を確認し、土地局(Land Office)での登記手続きを行ってください。
6. まとめ
外資企業がタイで土地を所有するためのルートは、大きく2つです。
- BOI(タイ投資委員会)の投資奨励証書を取得し、工業用途地域内の土地を申請する(投資奨励法第27条)
- IEAT(タイ工業団地公社)が管理する工業団地内の土地に入居する(工業団地公社法第44条)
そして実務上は、この2つを組み合わせることで、土地の所有権・法人税の減免・関税免除・インフラの活用を同時に実現するアプローチが一般的です。
一方で、都市計画上のカラーゾーン規制や撤退時の売却義務など、実務上のリスクも存在します。弊社GDMでは御社の条件にあった土地探しからデューデリジェンス(DD)、法的手続きまで一貫してお手伝いしております。
タイ進出・工場設立をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務アドバイスではありません。タイの法令は改正されることがあります。実際の投資・土地取得の際は、必ず現地の弁護士・税理士・専門家にご相談ください。

GDM編集部








