
タイ、PCB製造とAIデータセンターで地域テック拠点化を加速
世界的なAIブームの中、タイは東南アジアにおける先端技術とデジタルインフラの拠点としての地位を確立しようとしている。PCB(プリント基板)生産とハイパースケールのAI対応型データセンターに大規模投資を呼び込み、AIや電子部品サプライチェーンの地域的リーダーを目指している。
PCBはチップ、抵抗、コンデンサ、コネクタなどを配置する土台であり、スマートフォン、自動車、AIサーバー、スーパーコンピュータの稼働に不可欠である点でAIトレーニング用チップと同等に重要である。
過去3年足らずで、中国・台湾から約60社のPCBメーカーがタイに新工場を設立している。代表例は以下の通りである。
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Unimicron:タイで最大5工場分の土地を確保し投資拡大
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Zhen Ding Tech:2025年から2026年にかけて総額600億台湾ドル超(約678億バーツ)を投資
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Shennan Circuits:総額12億7400万元(約 63.7億バーツ)を投じ工場建設
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Victory Giant Technology:アユタヤにAIハードウェア工場を建設、2025年後半稼働予定
タイはこれらの投資により、中国に次ぐ世界第2位のPCB生産拠点となることを目指している。米国トランプ政権によるタイからの輸入に対する19%関税の影響は限定的であり、ベトナムやインドなどの組立工場を経由して米国に輸出される最終製品に組み込まれるため、大きな打撃は避けられている。
一方、AI対応型データセンター投資も進展している。シンガポールのDigital EdgeとタイのB.Grimm Powerがチョンブリで初の共同データセンター建設に着手した。総額10億米ドル(約 3,650億バーツ)規模の投資計画の一環であり、EEC(東部経済回廊)に建設される100MW級のハイパースケールキャンパスは、AIおよびクラウド需要に対応する持続可能な高性能インフラを提供する。再生可能エネルギーを活用し、2026年第4四半期に稼働開始予定である。
PCB製造とAIデータセンターの急速な拡大により、タイは世界的潮流と外資導入を活用して、地域のテクノロジー・AI拠点としての地位を固めつつある。専門家は、熟練労働力の確保、コスト競争力、国内エコシステムの強化が課題であると指摘している。これらを克服すれば、タイは中国・台湾に続く世界第3の技術サプライチェーン拠点となる可能性がある。
Source:
Thailand emerges as a top hub for PCB production (The Nation News)
Digital Edge and B.Grimm Power Break Ground on First EEC Data Center (Digital Edge News)
Industry Outlook 2025-2027: Printed Circuit Boards, Krungsri Research

GDM編集部